戸籍の話2(相続手続きに必要なもの)
こんにちは、司法書士・行政書士の山口です。
前回の戸籍の話の続きです。
前回は亡くなった方(被相続人)の相続人が子供2人だった場合の必要な戸籍についてお話しました。
今回は被相続人をAとし、Aには配偶者のBがいて子供がいない、父親のCが生存している一方で母親は死亡している、という事案で必要な戸籍を考えてみましょう。
図にすると下記のような状況です。
さて、相続が開始したとき、誰が相続人になるかというのは民法によって定められていますので、ここで簡単に整理しておきましょう。
・被相続人死亡時の配偶者は常に相続人になる
・被相続人に子供がいれば子供が相続人になる(第1順位)
・被相続人に子供がいなければ、直系尊属のうち、近い者が相続人になる(第2順位)
※直系尊属・・直通する系統のうち、自分より前の世代のこと。近い方から父母、祖父母、曾祖父母...となります。
・被相続人に子供、直系尊属がいない場合は兄弟姉妹(第3順位)が相続人になる
これらのルールで今回の事案を考えてみると、Aの相続人はBとCということになります。
少し補足します。
直系尊属のうち、父親のみ相続人となっていますが、仮に母親が健在であれば、父と母両方相続人になります。
また、子供がいないというのは、過去に子供がいたけれども、何らかの原因でいなくなった場合も含みます。
例えば、Aの死亡前に、その子供が亡くなった場合等です。
ただし、その亡くなった子供に子供がいた場合、その子供の子供(つまり孫)が第1順位の相続人になります。
あまり複雑にするとわかりにくくなりますので、今回の事例ではAには過去においても子供がいなかった、ということにしましょう。
さて、では今回のケースで必要な戸籍はどうなりますでしょうか。
今回もまずは結論から。
必要な戸籍は次のとおりです。
・Aの出生から死亡までの戸籍謄本すべて
・Bの現在の戸籍謄本または戸籍抄本
・Cの現在の戸籍謄本または戸籍抄本
・母が死亡した記載のある戸籍謄本または戸籍抄本
※戸籍謄本は、現在、正式には戸籍全部事項証明書、戸籍抄本は戸籍一部事項証明書と言います。
さて、なぜAの戸籍を出生から死亡まで取得しなければならないのでしょうか。
まず、前回お話した相続人調査の基本を思い出してみましょう。
戸籍は人ごとに複数存在し、ある人の子供を調べるためにはその人の戸籍をすべて確認しなければなりませんでした。
しかし、今回はAに子供がいません。
それなのにすべての戸籍を必要とする理由は何でしょう。
順を追って考えてみます。
もし、Aに子供がいた場合はどうでしょうか。
その場合は、民法のルールに従い、その子供が相続人になり、父親であるCが相続人になることはありません。
そこで、今回のようにCが相続人になる場合は、Aに子供が一人もいないことを証明しなければならないのです。
そして、そのことを証明するためには、Aの出生から死亡までの戸籍を集め、そこに子供が一人も記載されていないことを確認しなければならないのです。
ちなみにBやCの現在の戸籍が必要になるのは、Aの死亡時にBやCが生存しており、相続人として※廃除されていないこと、母親の死亡の記載のある戸籍は母親が既に死亡していて、相続人にはならないことを証明するために必要です。
これらの戸籍の一部はAの戸籍と情報が重複する場合があり、その場合は1通あれば、Aの戸籍かつ相続人等の戸籍として手続きには使用できます。
どうでしょうか、配偶者と父親が相続人になる場合の必要な戸籍、わかりましたでしょうか。
それでは今日はこのへんで。
※廃除・・被相続人に対して重大な虐待等を行った者を相続人から除外する手続き。裁判所に認められると戸籍にその旨が記載される。