戸籍の話1(相続手続きに必要なもの)

こんにちは、司法書士・行政書士の山口です。

さて、今日は戸籍の話でもしてみようと思います。

戸籍って色々な手続きに必要だったりしますが、とりわけ相続手続きには必須の書類です。
相続手続きを行う場合、原則、亡くなった方(被相続人)の相続人を過不足なく特定しなければなりません。
この相続人を特定し、証明する書類として活躍するのが戸籍という訳です。

さて、では相続人を特定するための戸籍とは具体的にどういうものなのでしょうか。
例えば、被相続人をAとして、相続人が子供のBとCだった場合で考えてみます。
この場合、必要な戸籍は次のとおりです。

・Aの出生から死亡までの戸籍謄本すべて
・Bの現在の戸籍謄本または戸籍抄本
・Cの現在の戸籍謄本または戸籍抄本
 ※戸籍謄本は、現在、正式には戸籍全部事項証明書、戸籍抄本は戸籍一部事項証明書と言います。
 
これではよくわかりませんよね。

まず、戸籍謄本と戸籍抄本という新しい言葉が出てきました。
この2種類の戸籍の違いを簡単に説明すると、戸籍抄本は対象の人のみを内容とし、戸籍謄本は対象の人を含む家族全員の内容が記載された戸籍のことを言います。
Bを例にとると、Bの戸籍謄本はBが結婚している場合、BとBの配偶者、Bの子供について記載されています。
一方、戸籍抄本はBの内容しか記載されていません。

ここで、いったんまとめますと、亡くなったAについては常に家族全員の情報が記載された戸籍が必要で、相続人については家族全員が記載された戸籍でも自分だけが記載された戸籍でも良い、ということになります。
もし一般の方が手続きを自力で行う場合は、大は小を兼ねるということで、全て戸籍謄本で取得すれば間違いないです。

さて、ここまでのお話で戸籍を揃えられたら、苦労はしません。
戸籍について一番の難関が「Aの出生から死亡までの戸籍謄本すべて」の「すべて」というところです。

すべてって、戸籍謄本は戸籍謄本でしょう、1通取得すれば終わりじゃないの?
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は戸籍って、一人に対して複数存在する場合が多いのです(とても若い人は別です)。
ちなみに私については、おそらく4種類あると思います(たぶん・・・)。
これは、身分の変動や、本籍地の移動、法律の改正等、様々な要因によって戸籍が新たに書き換えられることが原因なのです。
例えば、Aが出生から下記のような変遷をたどったとします。

①昭和30年、A生まれる。(本籍 茅ヶ崎市)
②昭和35年、A5歳の時に法律が変わった影響で戸籍の様式が変わる。(本籍 茅ヶ崎市)
③昭和60年、A30歳で結婚。(本籍 茅ヶ崎市)
④平成15年、A48歳の時に法律が変わった影響で戸籍の様式が変わる。(本籍 茅ヶ崎市)
⑤平成20年、A53歳の時に本籍を茅ヶ崎市から小田原市に変更。(本籍 小田原市)
⑥平成30年、A63歳の時に亡くなる。(本籍 小田原市)

①でAが最初に戸籍に記載されてから、②、③、④、⑤でそれぞれ戸籍が書き換えられることになります。
すると、必要な戸籍謄本は、Aが(1)生まれてから5歳までの情報が記載された戸籍謄本、(2)5歳から30歳までの情報が記載された戸籍謄本、(3)30歳から48歳までの情報が記載された戸籍謄本、(4)48歳から53歳までの情報が記載された戸籍謄本、(5)53歳から63歳までの情報が記載された戸籍謄本、の5種類の戸籍謄本になるという訳です。

戸籍が一人について複数存在するのは理解できたとして、ではなぜこれらすべてが必要なのでしょうか。

Aの戸籍謄本を集めるのはAの相続人を調査することが目的ですから、まずAの子供を確定しなければならないのです。
それなら、③の婚姻以後だけ集めればいいのではないの?と疑問がわきます。
いえいえ、もしかしたら、複数回結婚しているかもしれませんし、独身時代に養子縁組をしているという可能性もないわけではないのです。
なので、生まれてからすべての家族関係を書類で確認しなければならないという訳です。

さて、最後に今日のまとめ。

子どものみが相続人になる相続(配偶者と子供のみも同じです)について必要な戸籍は、以下のとおりです。

・亡くなった人については家族全員の記載がある(戸籍謄本)、生まれてから亡くなるまでの戸籍すべて。
・相続人については、家族全員の記載がある、又は相続人のみの記載がある(戸籍謄本または抄本)、現在の戸籍。

また機会があれば、続きを書こうと思います。
ざっくりですが、今日はこのへんで。